なぜ体にいい油と悪い油があるの?あなたが知らない油の世界
近年、健康志向が高まり、油を気にする人が増えています。
しかし、なんとなく選んだ物を使っていたり、詳しく分からないという方も多いのではないでしょうか。
一口に「油」といっても種類はさまざまで、油の世界はとても奥が深いです。
そこで今回は、体にいい油や健康への影響など、油について詳しく解説していきたいと思います。
ぜひこれらの情報を知り、油を選ぶ際の参考にしてみてください。
まずは油についてざっくり知ろう
油(脂質)は、タンパク質・炭水化物とともに、ヒトが生きていくために必要な三大栄養素の1つです。
体の基盤となる細胞膜を作ったり、女性ホルモンの分泌を促したり、ビタミンの吸収を助けたりと、私たちの健康や美容に欠かせない役割を果たしています。
また、皮下脂肪として、臓器を保護したり、寒冷から体を守ったりする働きもあります。
油は、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類に分けられます。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の特徴とは?
出典:日本植物油協会
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、肉のあぶら身や乳製品など、動物性の脂質に多く含まれます。熱に強く、酸化しにくいのが特徴で、常温で固まる性質を持ちます。
体の重要なエネルギー源で、不足すると血管が弱くなり、脳出血のリスクが上がります。
一方、摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が増え、心筋梗塞や心臓病の危険性が高まる可能性があります。
また、肥満、糖尿病のリスクを引き起こす可能性もあります。
飽和脂肪酸は、炭素の結合の長さによって短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分類されます
<飽和脂肪酸の分類>
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は、オリーブオイルやごま油など植物性食品や魚に多く含まれ、常温で固まらない性質を持ちます。
エネルギー源として利用されるだけでなく、体内の細胞膜を形成する重要な構成要素です。また、血液中のLDLコレステロールを減らす作用があります。
不飽和脂肪酸は、摂取すると健康によい効果がたくさんあると言われているので、次の項目でさらに掘り下げていきます。
メリットが多い不飽和脂肪酸の重要性
不飽和脂肪酸は、オメガ9系、オメガ6系、オメガ3系の3つの脂肪酸から構成され、これらは健康な体と脳の機能を維持する上で重要な役割を果たしています。
体内で合成できる(オメガ9)と、合成できない(オメガ6、オメガ3)に分類され、異なる働きをします。ここではそれぞれの特徴について解説していきます。
オメガ9
オレイン酸(オメガ9脂肪酸)が多い健康に良いと言われている油です。
HDL(善玉)コレステロールを下げずに、LDL(悪玉)コレステロールだけを除く働きがあり、動脈硬化や高血圧の予防に効果があるといわれています。
また腸の働きを活性化し、便秘予防や腸内環境改善が期待できます。酸化しにくく使いやすいのも特徴です。
オメガ6
リノール酸(オメガ6脂肪酸)が多い油で、コレステロール値を下げる働きがあります。
ですが悪玉だけでなく、善玉コレステロールも減少させてしまうため、摂りすぎには注意が必要です。
また摂りすぎによって、アトピーなどのアレルギー疾患の悪化、動脈硬化を引き起こすリスクや、心筋梗塞やアレルギー反応が起こりやすくなる可能性もあります。
オメガ3
オメガ3脂肪酸(DHA、EPA、α-リノレン酸)を含む健康に良いと言われている油です。
青魚に含まれるDHAは脳内の情報伝達を活性化し、記憶力や物忘れの改善などへの効果が期待できます。
アマニ油やえごま油など植物油に含まれるα-リノレン酸や青魚に含まれるEPAは、血液をサラサラにして血栓ができるのを予防をする働きがあります。
また、LDLコレステロールを減らすなどの働きがあるため、生活習慣病を予防する効果や、肌や髪に潤いを与えるなど美容にも良いと言われています。
酸化しやすいのが特徴で、不足すると肌が乾燥したり、皮膚炎、集中力の低下などが起こります。
<オメガ系脂肪酸の特徴>
オメガ3は積極的に摂取を
飽和脂肪酸やオメガ9は体内で合成可能ですが、オメガ6やオメガ3は体内で生成できないため、「必須脂肪酸」と呼ばれます。
必須脂肪酸は食事から摂取する必要があり、私たちの体が正常に機能するために不可欠な役割を果たすため、積極的に摂りたい油です。
とはいえ、たくさん摂ることが健康にいいというわけではありません。
オメガ6は、元気な毎日をサポートする一方で、摂りすぎると健康バランスを崩してしまう可能性があります。その乱れを整えるのがオメガ3です。
つまり健康な毎日のためには2つをバランスよく摂ることが大切です。
理想的なオメガ3とオメガ6の比率は、1:2だとされていますが、日本人の現状としては1:10と、オメガ6の摂取割合が大きくなっています。
その理由は現代の生活では意識しない所でオメガ6を摂取する機会が多いからです。
オメガ6系の油は飲食店やファーストフードなどの外食、スーパーのお惣菜やコンビニ弁当などの中食をはじめ、
スナック菓子やインスタント食品などの加工品に多く使われています。
なので理想的な比率に近づけていくためには、不足しがちなオメガ3を食事の中で積極的に摂り入れていく必要があります。
なるべく摂らない方がいい油とは?
油は、必要なものである一方、健康に害をもたらす油もあります。ここではできるだけ避けた方がいい油について解説していきます。
①酸化した油
油は酸素と触れたり、日光や蛍光灯などの光にあたると酸化してしまいます。また、熱にも弱いので、加熱後の油は使い回し厳禁です。
酸化した油はヒドロキシノネナールや過酸化脂質など有害物質を発生させ、
動脈硬化、脳梗塞、認知症のリスクや、シミ、シワなど老化の原因にもなります。
油の酸化は油の劣化で、体にとってデメリットばかりなので、変な匂いがしたり、色が濃くなった油の使用は控えましょう。
②パーム油(植物油脂)
パーム油は、アブラヤシから生産される油で、酸化や熱に強く安価で製造できる事から、年々生産量が増え、世界一の生産量の油です。
パーム油の問題点は長期の海上輸送の過程で、防腐剤などの添加物が大量に使用されている事と、発がん性の危険も疑われている事です。
一般的な商品としてほとんど流通していないので、あまりなじみがないと思いますが、実はいたる所で使用されています。
例えばインスタント麺や冷凍食品、ポテトなどのスナック菓子、ファストフードや外食店舗の業務用揚げ油などです。
また、パーム油のために大量に森林を伐採するので、森林の破壊や、野生動物への影響など、環境への影響も問題視されています。
③トランス脂肪酸
トランス脂肪酸を多く摂取すると、心臓病など病気のリスクが上がることがわかっています。
トランス脂肪酸は天然に含まれるものと人工的に作られたものがあり、天然のものは牛肉や羊肉、牛乳、乳製品に微量含まれます。
問題なのは植物油を高温で加熱して脱臭する工程で生成されるマーガリンやショートニングなど人工的に作られたものです。
人工的に作られるトランス脂肪酸はすでにアメリカでは使用が禁止されています。
日本でも厚生労働省が注意を促していますが、原材料表示など義務がないのが現状です。
トランス脂肪酸が含まれている食品は多く、原材料名に「ショートニング」「植物油脂」と記載されている場合、トランス脂肪酸が含まれているかもしれないので注意が必要です。
油の1日の摂取目安量
厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、脂質の1日の摂取量の目安は、総エネルギーの20〜25%と言われています。
例えば1日の食事で2000カロリーを摂取する場合、脂質の量は1日40〜60g程度(大さじ3〜4)が目安です。
これは食品そのものに含まれている脂質を合わせた量なので、調理に使う植物油の使用量だけを考えると、1日の使用量は12〜24g(大さじ1〜2)程度にする必要があります。
油はバランス良く摂取しましょう
どんな油を摂取するかは、何を食べるか?と同じくらい大事なことで、油が体に及ぼす影響はみなさんが考えている以上に大きいものです。
しかし、どんなにいい油だったとしても過剰摂取は禁物です。
悪い油を避け、体にいい油をバランスよく取り入れ、油を健康な生活に役立ててください。