有機野菜って何?無農薬野菜との違いやそれぞれのメリットも解説
健康意識の高まりから、有機野菜や無農薬野菜が注目されています。
体に良さそうなイメージはあるものの、違いまではわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、有機野菜と無農薬野菜の定義を説明した上で、両者の違いや共通するメリット・デメリットも解説しています。
また、一度は「有機JASマーク」の表示が付いた野菜を目にしたことがあると思いますが、この認証制度についても合わせて解説しています。
ぜひこれらの情報を知り、野菜を選ぶ際の参考にしてみてください。
有機野菜とは?
「有機野菜」とは農林水産省が定めた、有機JAS規格の条件を満たした野菜のことです。
オーガニック野菜と呼ばれる野菜も、有機野菜と同じ定義になります。
「有機野菜」は無農薬のイメージがありますが、JASが認定している31種類の農薬は使用しても良いことになっているので、「有機野菜」=「完全無農薬」とは限りません。
ただし、有機JAS認定を取得するためには、以下のような厳しい条件がJAS法という法律で定義されています。
◆ 種まきまたは植え付け前の2年以上の期間、
禁止された農薬・化学肥料・除草剤を使っていない、田畑で作られるもの (多年生の作物では3年)
◆ 栽培中も禁じられた農薬や肥料を使用していないこと
◆ 遺伝子組み換え野菜ではない
◆使用する肥料や農薬は、天然物質または科学的処理を行っていない天然物質に由来するもののみ
上記のような条件など、有機食品のJASに適合した生産が行われていることを、登録認証機関が検査します。
その結果認証された事業者のみが、有機JASマークを表示し店頭などで販売することができるのです。
「有機野菜」の証ともいえる有機JAS認証ですが、毎年更新しなければならない認証の費用や書類の作成など、生産者側に相当なコストと労力がかかります。
無農薬野菜とは?
続いて「無農薬野菜」について解説します。
「無農薬野菜」と聞くと、全く農薬が使用されずに栽培されるイメージを持つ方も多いと思います。
ただし、「無農薬野菜」と表示されている野菜の全てが、植物にも土壌にもまったく農薬が使われずに育ったとは限りません。
例えば、昨年度など今年度の栽培期間外に農薬を使い、農薬が土壌に残っていた場合でも、
今年度に農薬を使用しなければ、「無農薬野菜」として扱うケースがあります。
また、化学肥料ついては定められていないので、生産者によって使用している場合としていない場合があります。
なお、現状では国に農作物に全く農薬を含まないことを示す厳格な基準や、認定する機関がありません。
国は「特別栽培農産物」と表記することを推奨
そこで、農林水産省は消費者に誤解を与えないために、「無農薬野菜」ではなく「特別栽培農産物」と表記することを推奨しています。
「特別栽培農産物」とは、有機肥料を除く化学肥料と農薬の使用を基準値以下に控えた野菜のことです。
≪ガイドラインで定められた基準≫
農産物が生産された地域の慣行レベル(比較基準)と比べて
◆節減対象農薬の使用回数が50%以下であること
◆化学肥料の窒素成分量が慣行レベルと比べて50%以下であること
また、農薬や化学肥料を基準値と比較して減らしたのか or 全く使用していないのか、などによって細かい表示事項・表示方法のルールが決まっています。
そのため、栽培期間中農薬を使用していないものを購入したい場合は、
「特別栽培農産物」の中でも「農薬:栽培期間中不使用」の表示があるものを選ぶと良いでしょう。
参照元: 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン
有機野菜と無農薬野菜の違いは?
ここまで、「有機野菜」と「無農薬野菜」の定義や表示方法について解説してきました。
両者の大きな違いは、以下のように国が定める規定があるかどうかという点です。
◆ 有機野菜には、有機JASマークの登録認定機関が存在し、取得するには国が定める厳しい条件がある
◆ 無農薬野菜には、厳格な基準や認定する機関がない
ただし、「無農薬野菜」は「特別栽培農産物」と表示することが推奨されているなど、規定や表示制度は複雑です。
そのため、最近ではSNSやホームページで栽培方法や、野菜づくりに対する想いや考えを発信している生産者もいるので、自分自身の目で確認するとより安心です。
なお、令和元年の国の調査によると、有機JASを取得している農地の割合は0.3%前後にしか至らず、
国内に流通する99%以上の野菜が「慣行栽培」、つまり農薬や化学肥料が使われた一般的な栽培方法によるものです。
有機野菜や無農薬野菜のメリットとは?
有機野菜と無農薬野菜には、以下のような共通するメリットがあります。
安全性が高い
「有機野菜」には、使用できる化学肥料や農薬は天然物質に限るなどの厳しい制限があるため、安心感があります。
「無農薬野菜」の場合、全く化学肥料や農薬が使用されずに育った野菜ばかりではありませんが、
それでも「慣行栽培」の野菜と比較すると使用している量が少ないことは、安全面でのメリットといえるでしょう。
栄養価が高く野菜の味をしっかり感じられる
「有機野菜」や「無農薬野菜」のように極力農薬や化学肥料の力に頼らず育てられた野菜は、自力で成長しようとします。
また、厳しい自然環境の中で、限られた栄養を効率よく吸収して育ちます。
そのため、栄養価が高く、味も濃く、野菜本来のおいしさが引き出されることが魅力です。
実際に、野菜嫌いのお子さんでも、自然な甘みを感じ、有機野菜であれば食べることができたというケースも多いです。
お子さんの野菜嫌いに悩む方は、一度試してみるのも良いでしょう。
有機野菜や無農薬野菜のデメリットとは?
続いて、「有機野菜」や「無農薬野菜」のデメリットについて以下の2つを解説します。
価格が高くなりがち
「有機野菜」や「無農薬野菜」は、一般的な野菜と比較すると価格が高い傾向があります。
その理由は、農薬を使用しなかったり、量を減らしているからこそ虫避けや除草作業など生産者の手間が増え、栽培が難しくなるからです。
手間がかかっている分、価格が上がるのは当然のことですが、
一般的な野菜と比較すると、高く感じてしまうのはデメリットといえます。
見た目がふぞろいのことがある
「慣行栽培」の野菜は、農薬や化学肥料によって安定的に育てられているので、形が均一になりやすいです。
一方で、「有機野菜」や「無農薬野菜」には色や形・大きさにバラつきが出る場合がありますが、それは自然に近い形で栽培されるからです。
日本では、出荷する野菜に厳しい規格が設けられているので、形が均一の野菜が一般的には多く見られます。
そのため、見た目がふぞろいな点をデメリットと感じる場合があるかもしれません。
納得できる野菜選びをしましょう
意外と知られていない「有機野菜」と「無農薬野菜」の定義や、それぞれの違いについて解説しました。
「有機野菜」には使用できる農薬や化学肥料に制限があり、
国が定めた厳しい条件をクリアした事業者のみが、有機JAS認定を受けられる制度になっています。
一方で、「無農薬野菜」には明確な基準や認定機関がなく、国は「特別栽培農産物」と表示することを推奨しています。
農薬や化学肥料の使用について、表示だけでは一概に説明できない現状ですが、
日本に流通する99%以上の「慣行栽培」でつくられた野菜と比較すると、
「有機野菜」や「無農薬野菜」には安全性や栄養面など様々なメリットがあります。
また、野菜を選ぶ際には表示だけで判断するのではなく、
栽培方法や野菜づくりへの想いをSNSなどで発信している生産者もいるので、自分自身の目で確認するとより安心です。
ぜひ、ご自身が納得できる野菜を選んでみてください。